人工透析について
腎不全によって以下のような状態が生じているときには、透析が必要になります。
- 脳の機能障害(尿毒症性脳症)
- 心膜炎
- 治療で改善しないアシドーシス
- 心不全
- 全身の水分過剰状態
- 治療で改善しない肺浮腫
- 高カリウム血症
透析を始めるということは、機械に依存して生命を維持することを意味し、ライフスタイルの大きな変化を伴います。
その決心をするのは容易なことではありません。
しかし、きちんと計画された透析プログラムによって、大半の人は普通に近い生活ができるようになります。
透析を受けている人のほとんどが、ある程度我慢できる内容の食事を食べられるようになり、血圧は正常になり、貧血がなくなり、神経の損傷など合併症の進行を防ぐことができます。
急性腎不全の場合は、多くの医師が尿量の少ない患者に対して透析を勧め、血液検査の結果から適度な腎機能が回復したと判断されるまで透析を続けます。
薬物や毒物を体内から取り除くために、短期透析または緊急透析を行う場合もあります。
慢性腎不全では、検査の結果から患者の腎臓が代謝性老廃物を十分に取り除いていないと判断される場合や、日常生活に支障が出ていると判断される場合に、医師は透析を勧めます。
透析は慢性腎不全の長期療法として、または腎移植前の一時的な治療として行われます。
一般に、透析には患者を支えるチームが必要となります。
医師は透析を処方し、合併症を治療し、その経過を管理します。
看護師は患者の全体的な体と心の健康状態を管理し、軽い運動などの指導も行います。
ソーシャルワーカーは患者の移動手段や家庭での介助の手はずを整えます。
栄養士は適切な食事療法を指導し、食事の変化に対する患者の反応を管理します。
透析の種類
透析には血液透析と腹膜透析の2種類があります。●血液透析
血液透析では、血液を体外に取り出し、装置を使ってダイアライザー(透析器)に流します。
ダイアライザーは血液をろ過して代謝性老廃物を取り除き、きれいになった血液を体内に戻します。
この際に体に戻す体液の総量を調節できます。
血液透析は多くの場合、透析センターで行われます。
透析センターの多くは病院外にありますが、病院内に設けられているところもあります。

血液透析では、針を何度も繰り返し血管に刺す必要があります。
透析では通常、太い静脈カテーテルを首の近くにある太い静脈に挿入します。
長期にわたって透析をする必要がある場合には、動脈と静脈を結ぶ人工的な通路(動静脈瘻[ろう])を手術で形成します。
この方法では、通常は前腕の橈骨(とうこつ)動脈と橈側皮静脈をつなぎます。
その結果、橈側皮静脈が広がって、繰り返し針で刺すのに適した太さになります。
動静脈瘻を作れない場合は、手術で人工血管を動脈と静脈につなぎ、人工血管に血液透析用の針を刺します。
血液透析中には抗凝固薬のヘパリンを投与して、ダイアライザーの中で血液が凝固するのを防ぎます。
ダイアライザーの中には多孔性の人工膜があり、血液と体液(透析液)を分離します。
血液中の体液、老廃物、電解質などは、膜を通って透析液に入ります。
血球や大きなタンパク質分子は膜の小さな孔を通過できないため、血液中に残ります。
そして、透析してきれいになった血液を体に戻します。
ダイアライザーにはさまざまな大きさのものがあり、効率性も異なります。
透析時間は通常約3〜4時間。慢性腎不全では大半の人が週3回の血液透析を必要とします。
●腹膜透析
腹膜透析では、腹膜をフィルターとして利用します。
腹膜の表面積は広く、多数の血管が網の目のように通っています。
血液中の物質は簡単に腹膜を通って腹腔に入ることができます。
腹壁を通して腹膜腔にカテーテルを刺し入れ、ここから液体(透析液)を注入します。
注入した透析液は、血流から代謝性老廃物が徐々に透析液に入ってくるまでの間、しばらく中に入れたままにしておきます。
その後、この透析液を排出して廃棄し、新しい透析液に交換します。

柔らかいシリコンゴムまたは多孔性ポリウレタンのカテーテルを使うことで、透析液をスムーズに流すことができ、損傷も少なくなります。
カテーテルは透析のたびに毎回ベッドサイドで挿入する方法と、手術で留置する方法があります。
長期留置型のカテーテルの中には、やがて皮膚にほぼ覆われた状態になるタイプもあり、使わないときには先端の開口部にふたをしておきます。
腹膜透析にはさまざまな方法が用いられます。
最もシンプルな方法の手動間欠性腹膜透析では、透析液の入った袋を体温にまで温め、10分間かけて腹膜腔の中に注入します。
そして60〜90分間ほど入れたままにしておき(滞留)、その後およそ10〜20分間で排出します。
治療全体で12時間かかります。
このほか自動循環間欠性腹膜透析という方法では、透析液の加温や循環が自動的に行われるため看護の必要性が軽減されます。
持続性自己管理腹膜透析(CAPD)では、透析液を腹部にかなり長い時間入れたままにします。
通常は1日に4〜5回透析液を排出して補充し、そのうちの3回は、日中に4時間以上の間隔をあけて行います。
1回の交換に30〜45分かかります。
夜間は1回交換し、睡眠中は8〜12時間という長い滞留時間になります。
持続性周期的腹膜透析(CCPD)は、夜間は自動循環装置を使って睡眠中に短い間隔で交換を行い、日中は循環装置を使わずに手動で長時間の間隔をあけて交換を行う方法です。
この方法では日中の交換回数を少なくできますが、就寝時に装置を接続する必要があるため、夜間の動きが妨げられます。
透析の種類の選択
どの種類の透析がその人に最適かを判断するにあたっては、ライフスタイルなどさまざまな要素を考慮する必要があります。腹膜透析は自宅で行うことができるため、血液透析センターに通わずにすみます。血液透析では、血液をいったん体外へ取り出し、人工腎臓の役割を果たすダイアライザーでろ過します。動脈と静脈の間に動静脈シャントという人工的な通路を作り、血液を取り出しやすくします。
腹膜透析では、腹膜をフィルターとして利用します。腹膜とは腹部の内臓を覆っている膜で、この膜で包まれた空間(腹腔)を使ってろ過を行います。
透析に伴う注意点
透析を受けている人は特別食が必要になります。腹膜透析を受けている人の多くは食欲が減退し、またタンパク質が透析中に失われます。
そのため、特別食はタンパク質を比較的多く含む内容とし、1日に理想体重1キログラムあたり約1グラムのタンパク質を摂取します。
塩分は通常のナトリウム塩とカリウム塩の両方とも制限されます。
血液透析を受けている人の場合、毎日のナトリウムとカリウムの摂取量はさらに制限されます。
リンを多く含む食品も制限しなければなりません。
血液中のナトリウム濃度が持続して低いか低下傾向にある場合は、毎日の水分摂取量も制限されます。
体重を毎日測定して体重増加を管理します。
透析を受けてから次回の透析までに体重が過度に増加している場合は、水分の取りすぎと考えられます。
総合ビタミン剤によって、血液透析や腹膜透析で失われた栄養素を補う必要があります。また、エリスロポエチンまたはダルベポエチンで赤血球の産生を促します。炭酸カルシウムや酢酸カルシウムなどのリン吸着剤を使って、食品中の過剰なリン酸塩を取り除きます。
低カルシウム血症と重度の腎性骨ジストロフィの場合は、カルシトリオール(活性型ビタミンD)やカルシウムを補給します。
透析を受けている人は、生活のあらゆる面で喪失感を味わいます。
特に、自立して生活できなくなることが苦痛に感じられます。
自分のライフスタイルの崩壊にうまく対処するのは困難なことです。
透析を受けている多くの人が、気分が落ちこみ不安になります。
心理カウンセリングや社会カウンセリングは、透析を受けている本人だけでなく家族にとってもしばしば役立ちます。
多くの透析センターが心理面や社会面でのサポートを行っています。
自立して生活できなくなることに対処するには、以前と同じ趣味や、関心をもっていたことを続けるように励ますことが役に立ちます。
血液透析を受けている人は、透析センターまで定期的に通う移動手段を確保する必要があります。
透析を受けることで、仕事や学校、余暇の活動に支障が出ることもあります。

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